糖尿病は治療となると運動療法・食事療法・薬物療法が基本になりますが、予防の段階では運動と食事の見直し、肥満の解消や血糖コントロールの改善を目指すことで対応できます。とくに運動は誰でもすぐに実践することができ、かつ効果的な予防法。運動により使われた筋が糖や遊離脂肪酸の利用を促進させるため、高血糖の改善が得られます。また有酸素運動により肥満を改善すると、脂肪組織から産生されるアディポサイトカインなどのインスリンの働きを妨害する物質の分泌が低下。このため筋肉や肝臓の糖の処理能力が改善し、血糖値を安定させる効果もあります。さらに有酸素運動だけでなく、筋肉に負荷をかけて繰り返し行うレジスタンス運動も高血糖の改善には大切。レジスタンス運動は、筋量の増加が糖の処理能力を改善させるため血糖コントロールに非常に有効です。
●有酸素運動
ウォーキングやジョギング、水泳など長時間継続して行う運動。筋肉を動かすエネルギー(脂肪や糖)を燃焼する際に、酸素を使うことから有酸素運動と呼ばれる。
●レジスタンス運動
ダンベル、スクワットなど、筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける運動を繰り返す、いわゆる筋トレのこと。筋力や筋肉量が増加すると、インスリン抵抗性が改善。有酸素運動との組み合わせも、糖尿病予防には有効。
では具体的にどんな運動が効果的なのかというと、日本糖尿病学会では、次のような運動種目、運動強度、運動頻度、時間を推奨しています。
まず有酸素運動は、ウォーキングやジョギング、水泳、自転車などできるだけ大きな筋を使用する全身運動をできれば毎日、少なくとも週に3~5回。各20~60分間行い、1週間の合計が150分以上の実施が推奨されています。
頻度が多いように思われるかもしれませんが、この頻度がじつはとても重要。糖代謝の改善は運動後12~72時間持続することから、血糖値の低下を目標とするのであれば、推奨頻度で行う必要があるのです。たとえば1回につき15分間のウォーキングを朝晩、週5日と考えればどうでしょう。それなら、1週間150分の目標がクリアできますよね。
レジスタンス運動は、腹筋やダンベル、腕立て伏せ、スクワットなどの1種類につき、10~15回を1セットとして1~3セット繰り返すことが勧められています。ただしもちろん無理は禁物。慣れていない場合はレジスタンス運動の種目、セット数を少ない数からはじめ、徐々に増やしていきましょう。
運動するタイミングは、いつでもOKですが、とくに食事の1~2時間後に行うこと食後の高血糖状態が改善されます。まずは食後に家の近くを散歩することからはじめてはいかがでしょう。夫婦や仲間と会話しながら、またはワンちゃんと一緒になど、継続しやすい工夫を加えるのもおすすめです。