災害時のレクリエーション支援
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  支援の方向
レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ 

支援の方向

公開日
2020年9月16日
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2012.5.29
Vision of the team recrew -震災レク支援のこれから-
支援の幅を広げる傾聴のスキル


2012.5.29 Vision of the team recrew -震災レク支援のこれから- 支援の幅を広げる傾聴のスキル

レクリエーション支援の現場では、被災者のみなさんからいろいろな話をお聞きする機会がよくあります。一緒に楽しい時間を過ごすことは、お互いの距離感を縮め、コミュニケーションをとりやすくし、「今日はいろいろ話せてスッキリした」、「胸につかえていたものが取れた」という言葉をいただくこともありました。誰もが持っている「話したい」という気持ち。そうしたニーズに応えていくことも、楽しさを提供するレクリエーション支援の一つですし、それが被災者の心のケアにもなるといわれています。同じように、コミュニケーションを通して被災者を支援する傾聴という活動があります。被災者の話に耳を傾けることがよくあるレク支援は、この「傾聴」という活動にどのくらい関われるのでしょうか。

黒川郡レク協会の安倍祐子さんは、保育心理士の立場から、石巻市の大川小学校での傾聴・カウンセリング活動に携わりました。大川小学校では津波で児童74人が死亡・行方不明になりました。安倍さんたちは昨年の7月から、被災した子どもたちの父母や祖父母の話を聴き始めました。最初のうちは、震災の時の様子や最近の生活の状況などの話で終わることが多く、傾聴の機会を重ねるごとに、段々と気持ちが出てくると言います。最初の3日間、いろいろな情報に振り回され、安否の確認もできずにいるところに、いきなり遺体の確認をして欲しいと言われたこと。毛布や布団なども敷かれず、そのまま遺体が置かれていたこと。家族の中での受け止め方の違い。時間が経つにつれ、「もうそろそろ立ち直った方がいい」と言われること。こうした胸の内にあることを言葉にしてはき出すことで、少しずつ癒されていくのです。

安倍さんたちは、話を誘導したり、否定することなく、被災者の話に耳を傾けます。そして、相手が自分の話した事や気持ちを確認しやすいように、話した内容を要約して返していきます。こうしたやり取りを重ねていきながら、現実を受け入れ、気持ちの整理ができるように寄り添い、これからの見通しを立てていく支援を目指しています。子どもの死と直面した大川小学校では、現実を受け入れるのにまだまだ時間が必要で、安倍さんも「何年もかけてつき合う覚悟」と言います。

宮城県では仙台傾聴の会というボランティアグループも傾聴の活動を続けています。同会の活動も、自分の思いを話してもらいながら気持ちを楽にしてもらう機会を重ね、徐々に自分の置かれている状況や自分自身を受け入れることを支援します。こうして自分の気持ちを伝えるなかで、困っていることに対する自分の考えがまとまったり、次の一歩を考え始めることがあります。また、自分の気持ちを「受け入れてもらった」という感覚を持つとで、例えば、いろいろな物資やボランティアの支援を受けたことを再認識し、「自分でもできることをしたい」という気持ちにもなりやすいと言います。こうした過程を通して、被災者が少しでも前に進み、自立していけるように支援をしています。

仙台傾聴の会では145人の会員が、仮設住宅の集会所や地域のコミュニティセンターで被災者に向きあっています。会員の中には、被災者の支援をしたいという気持ちから同会に入り、傾聴について学習をした方もいます。一人でも多くの被災者の支援をするためにも、「多くの人に傾聴のスキルを学んでもらいたい」と代表の森山英子さんは話します。

被災者と信頼関係を築き、時間をかけて本音を話してもらう。レク支援の中で話を聴くことは、本来の「傾聴」の活動に代わることは難しいでしょう。しかし、人は話すことによって心が安らぎます。また、話を聴くことは相手の存在を受け止め、それが相手の生きがいにもつながると言われます。そうしたことからも、レク支援の中で被災者の話を聴く機会を設けることは意味のあることです。

安倍さんは、さらにレクリエーションの役割について教えてくれました。「傾聴による支援が必要な人でも、仮設住宅等の部屋に閉じこもっていてはアプローチができません。レクリエーションの楽しい企画をきっかけに出てきてもらい、お互いに和み、心を開いてもらう。そんな役割があるのではないでしょうか」。森山さんは、レク支援の中で傾聴の活動を行うことを提案します。傾聴活動の中でも、最初に身体を動かしたり、最後に一緒に歌を歌ったりすることが、雰囲気づくりやリラックスのために有効だと言います。回数を重ねていくと、被災者のみなさんも話だけではなく、そうした事を望む場合もあるそうです。

傾聴は、そのためのスキルが必要になります。アイコンタクトや笑顔、うなずきといったレクの学習と共通することもありますが、相手が「話を聞いてくれる」と思える姿勢とスキルを学習することは大切です。一方で、そうしたスキルを身につけることで、私たちのレク支援の幅が広がる可能性があります。継続して同じ仮設住宅を支援しているグループは、被災者との信頼関係も築かれているため、傾聴の支援をしやすいでしょう。また、これまで仮設住宅と比べて支援が行き届かなかったといわれる「みなし仮設」への支援においても、被災者の「取り残された」という思いを受け止めるためにも必要とされる支援です。



(企画・広報チーム 小田原一記)
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