災害時のレクリエーション支援
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  まとめ・報告
レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ 

まとめ・報告

公開日
2020年9月6日
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2013.9.26 「3.11を振り返る」④
話を聞き、思いを共有するところから支援活動が始まった
特定非営利活動法人 福島県レクリエーション協会 佐藤喜也


福島県レク協会では、震災後早い時期から活動を開始しました。とは言っても最初からうまくいったわけではありません。3月12日早朝、福島県社会福祉協議会や福島市の行政や社会福祉協議会に連絡を取り、私たちに出来ることを告げてオファーを待ちましたが、あの状況の中でオファーなんてあるはずがありません。とりあえず一番近くの避難所を毎日訪ね、「お役に立てることはありませんか?」と話しかけてみましたが、ほとんど相手にしては頂けず、テレビやワンセグの画面を食い入るように見つめていらっしゃるだけでした。

ガソリンの入手が可能になってすぐに、県内各地の避難所を回る活動を開始しましたが、避難所の管理をしている行政の方々は、教育や福祉といった、レクリエーションに近い領域のお仕事をしている方々とは限りません。道路や橋の建設、税金の徴収などのお仕事をしている行政の方々もいらっしゃいます。「レクリエーション協会ですがお役に立てることはありませんか?」と言っても、「何が出来るの?」と訝られることもありました。その横で「○○療法士」「○○セラピスト」といった方々が、どんどん入り込んでいるのを目の当たりにし、私たちの活動の弱さを感じました。また、普段から行政の方々と良好な関係をつくっておくことやマスコミ等への露出を高めておくことの重要さも感じました。

県内各地を回った活動の一つは、全国のレクリエーション仲間から送られてきた物資の提供でした。避難所に直接お届けしながら、避難されている方の背中をさすりお話を聞かせて頂きました。うれしいお話も悲しいお話もありましたが、それらの思いを共有させて頂くところから私たちの支援活動は本格的になっていきました。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  まとめ・報告(1-1)

あの混乱の中で避難所に通い続けたことが、その後の活動を理解して頂くきっかけになりました。

たくさんお話を聞かせて頂き、ふと言葉が途切れたときに、「ちょっと身体を動かしてみませんか?」と声をかけます。にっこりして頂ける瞬間です。筋肉を強くする体操ももちろんありますが、私たちは、「息を吐くこと」「力を抜くこと」ができるアクティビティを選びました。ストレッチも有効でした。「息を吐く」、そのために冗談を交えて笑っても頂きました。

日常とは違った避難所の生活では「意識して」身体を使うことも大事でした。そこでは様々なゲーム等のアクティビティが活かされました。「グーパー」に代表される左右非対称動作を取り入れたゲームは、子どもからお年寄りまで笑顔で楽しんで頂けるものでした。

歌を歌うこともありました。時にはみんなで大きな声で、時には二人でつぶやくように・・・。4月、5月には、「ふるさと」を歌うかどうか迷った時期がありました。ある避難所で思い切って歌って頂いたとき、「いい歌だね」としみじみされ、「この辺は震災前には…」と話し出された方々を見て、ほっとしたこともあります。

避難所にいる子どもたちとの交流は、被災県に住み、若干なりとも落ち込んでいた私たちを元気にしてくれました。バルーンクラフトや折り紙、絵本や紙芝居の他、会場の条件が許せば、スポーツ系のレクリエーション用具「ルームラング」「ブーメラン」や「ドッヂビー」、「忍者ランド」なども持ち込みました。汗びっしょりになるまで遊んでくれますが、子どもたちはシンプルな遊びが好きです。子どもたちと遊んだ中で一番印象に残っているのは「ケンケンパー」でした。

6月頃から、コーヒー・ハーブティーのコーナーとネイルケアのコーナーを準備したところ、たくさんの皆様にお役立て頂くことができました。これらもレクリエーション支援の一つとして提供させて頂いたものです。

レクリエーション支援というと、「みんなを集めて」「ゲームや体操を」「一斉にやるもの」と思われがちですが、一人ひとりに寄り添い、心を通わせ、思いを受け止め、「心地よい時間」を共有することこそ、本当のレクリエーション支援だと私たちは考えました。豆を挽くところから、時間をかけてコーヒーを入れたり、湯温を調整しながら心を込めててハーブティーを入れたり、手をとって爪の手入れをさせて頂きながらのお話は、避難している方々の心にたまった澱を洗い流す効果もあったようです。

7月からは仮設住宅への引っ越しが始まり、8月からは仮設住宅訪問が開始されました。現在、私たちが毎月行っている県内5カ所の仮設住宅訪問も、早いところは3年目に入ります。レク協会自体の事業に加え、他からも支援活動の依頼を頂くケースも増え、同日に4~5事業が重なることも希ではありません。スケジュールの調整に苦労していますが、被災した方に誠実な活動として続けていくため、仮設住宅訪問の年間スケジュールを決め、顔がわかる誰かが必ず都合をつけて、活動に穴を開けないようにしています。

是非みなさんも、仮設住宅に移行した避難者の方々へのレクリエーション支援にご協力ください。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  まとめ・報告(2-1)

レク支援を行うためにも、また生活を心地よくするレク支援の一環として、トイレ掃除や食事の配給などの生活支援も重要な意味を持っていました。
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