災害時のレクリエーション支援
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  子どもたちの支援
レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ 

子どもたちの支援

公開日
2020年8月18日
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2012年8月23日
Vision of the team recrew -震災支援のこれから-
「子どもたちの支援」についての一考察


運動量や遊び場を確保する支援

東日本大震災では、子どもたちの運動量が不足し、それによる体力低下や健康への悪影響が懸念されてきました。「校庭に仮設住宅が設置され、十分な運動ができない」、「耐震の問題で体育館が使えない」という状況や津波の被害で子どもたちの遊び場も失われていることが新聞等でも報道されています。保護者へのアンケートなどでも、子どもたちの遊び場の確保に関する懸念はいつも高く、調査でもある被災地の子どもの運動量が30%少なくなったことや、高脂血症や脂肪肝の疑いのある子どもの割合が増えているデータも出てきています。
震災から1年半が経過していますが、子どもたちの運動量や遊び場を確保する支援はまだまだ必要とされています。郡山市では大規模な室内の遊び場が設置され、福島市でも遊び場を提供する試みが始まっています。福島市や伊達市のレク協会の「あそびの城」や相馬市のレク協会関係者が行っている子どもの居場所づくりも必要とされている支援の一つです。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  子どもたちの支援(1-1)

こうした場・機会の提供と同時に、ソフト・プログラムの提供も求められています。郡山市のある保育園では、遠足に行けない状況の中で、園の部屋を「山の部屋」、「海の部屋」等に見立て、それぞれ体を動かすアクティビティを用意し、それらの部屋を園児がまわり、最後にみんなでお弁当を食べて遠足に行った雰囲気を楽しむ-といったプログラムを行いました。日常的に子どもたちと接する保育士や教員のみなさんは、運動量を確保するために様々な試みをし、いろいろなプログラムを探しています。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  子どもたちの支援(1-2)

そうした中で、愛知県碧南市レク協会の有本征世さんが開発し、被災県のレク協会に提供した「忍者ランド(子どもたちが楽しみながら運動する遊びのキット)」は、多くの保育所や幼稚園で活用されましたし、先生方にいろいろなアイデアを提供しました。子どもたちの活動として和太鼓を取り入れた保育所もあります。夏祭りなどでのお披露目に向けて子どもたちは毎日練習し、それによって体を動かし、エネルギーを発散します。その結果、ご飯もよく食べ、震災前と比べても健康的な影響は出ていないと言います。こうした子どもたちが楽しみながら継続的に取り組める活動を提案することも期待されています。

地域ごとの違い・ニーズに対応する

全体的には子どもたちの運動量は少ない傾向にありますが、良い成果が出ている地域もあります。福島大学「うつくしまふくしま未来支援センター」の調査では、地域や学校等によっては、子どもたちの柔軟性や瞬発力などの運動能力は全国平均と比べてもそれほど劣らないというデータが出ました。放射線の問題で屋外での活動が制限されるなか、保育園や幼稚園、小学校の先生方が当初より運動量を維持する試みをされた成果だと言います。福島市内のある幼稚園では、室内での運動量を増やし、スイミングクラブと年間契約も結びました。その結果、震災前よりも子どもたちの体力は向上し、みんな泳げるようになったという例もありした。一方、福島大の調査からは、広い屋外で養いやすい持久力と投げる力が、全国平均を下回る傾向であることもわかりました。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  子どもたちの支援(2-1)

今後は、こうした地域や学校等での運動量・体力等の違いに合わせた支援が必要ですし、前記のような調査結果を考慮した支援が求められることも予想されます。例えば、屋内であっても持久力を高めたり、安全に物を投げて遊んだり、競ったりするプログラムや、バランス感覚や体幹を養うプログラムなど、ある程度目的を明確にしたプログラムを用意しておく必要もありそうです。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  子どもたちの支援(2-2)

新たな「心のケア」の視点

運動量をある程度確保している場合でも、子どもたちの心理的な問題は残っているようです。例えば、「屋外で伸び伸びと運動をしたり、遊んだりする機会が少ないことは、子どもたちのエネルギーの発散を妨げ、気持ちを不安定にしている」と言います。子どもたちが支援プログラム等のなかで暴力的な振る舞いをするケースも、そうした不安定な気持ちが原因の場合が多く、暴力的な発散の仕方を続けていくことの危うさを指摘する研究者もいます。
体育の時間や遊びの場面で活躍したり、認められる機会が少なくなったことで、気持ちが鬱いだり、自分の居場所を失ったと感じる子どもたち。避難した地域の学校に馴染めずにいる子どもたちも少なくないようです。岩手県のある校長先生(運動施設は確保できた小学校)も、「子どもたちが道草を楽しむこともできなくなった」と、子どもらしさを発揮する場面がなくなったことを心配します。また、町全体が復興に取り組むなかで「児童や生徒の問題行動が少なくなった」という地域では、「子どもたちがいろいろ我慢している」ため、「適度に楽しみや発散する機会も必要」といいます。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  子どもたちの支援(3-1)

これからの子どもたちの支援には、震災直後の心的ストレスのケアとは異なる新たな「心のケア」の視点も必要です。自分らしさを発揮して、褒められたり認められる。また、仲間や友だちとのつながりを感じるといった機会を、レクリエーション支援を通してできるだけ多く提供していくことが求められています。

(企画・広報チーム 小田原一記)
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