災害時のレクリエーション支援
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  支援の方向
レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ 

支援の方向

公開日
2020年9月18日
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2012.10.5
Vision of the team recrew-震災支援のこれから-
レク支援のなかで音楽を使うことの良さ


2012.10.5 Vision of the team recrew-震災支援のこれから- レク支援のなかで音楽を使うことの良さ

これまでの岩手県、宮城県、福島県で行われ支援活動を振り返ると、音楽がとてもよく使われてきました。避難所では小さな音でも音楽が流れると、活動が始まる合図になりましたし、東北出身の歌手の歌や県民の歌などは多くの人に受け入れられやすく、活動の最初によく歌われました。支援活動を行った公認指導者のみなさんに共通して、「歌うことで声を出し、たくさん呼吸をすることで元気になってもらいたい」、「たとえ一時でも先の見えない不安を忘れたり、胸のつかえを下ろしてもらいたい」という思いもありました。
そうした音楽の活用を振り返り、レクリエーション支援のなかで音楽を活かすことの良さ、可能性の広がりを考えてみます。

ストレスの緩和・発散

多くの支援活動の中で、歌は被災者のストレスを緩和・発散するために取り入れらました。周りに気を遣いながらの避難所生活では、レク支援の中で歌うことは、気兼ねなく声を出せる機会となり、「大きな声が出せて気持ちが晴れた」と喜んでもらえたり、時には歌詞が涙を誘い、「やっと気持ちを出すことができた」と言ってもらえたこともありました。子どもたちにとっても、遊び道具がない時期には、「かごめ、かごめ」などのわらべ歌の遊びが役立ちました。
周りに気を遣う生活は仮設住宅も同じです。一人暮らしの高齢者も少なくなく、「家にいるとずっと黙っている」といいます。そうした仮設住宅の生活を考えると、歌は今後も積極的に取り入れていきたい活動です。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  支援の方向(2-1)

交流・コミュニケーション促進

被災者のみなさんが顔見知りになり、コミュニケーションをとりやすくするためにも歌は活用されました。歌に合わせて隣の人の肩をたたいたり、2人組みや4人グループ等の手遊びを入れて、自然にふれ合う機会をつくっていましたし、「こんな遊び方もした」とその地のわらべ歌・遊びを教えてくれる方もいて、遊びを教え合いながら交流を深めることもありました。また、こうした自然な“ふれ合い”は、震災時のストレスを緩和することにも効果があると言われています。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  支援の方向(3-1)

健康づくり

歌にあわせた体操もよく行われました。エコノミークラス症候群予防や介護予防のための基本的な動作を、テレビでよく流れる曲や馴染みの歌に合わせて振り付けします。「1、2、3、4」とういかけ声よりも身体を動かしやすくなりますし、「自宅でもテレビを見ながら体操ができるように」という思いもあります。
歌詞を「パピプペポ」など発音しにくい言葉に換えて、口や顔の筋肉を刺激することもされていました。お手玉を使い、遊びながら楽しく身体を動かしたり、左右で順番をずらした指折りやグーパーなどで、笑いを引き出しながらの“頭の体操”もよく行われました。

レクのなかで音楽の良さが引き出される

「ただ体操をするよりも、音楽に合わせたほうが身体も動くし、反対に、さあ歌いましょうと言うより、動作があったほうが声も出るんです」と宮城県レク協会の山内直子さんは言い、「レクリエーションのなかだからこそ、いろいろな組み合わせができて、相乗効果が引き出せる」とこれまでの経験をふり返ります。
例えば、歌は色々な思い出、思いを引き出してくれます。「そんな話しがどんどん出て、みなさんがそのことを楽しみ始めたら、しばらく歌はやめて、話しを楽しんでいい」、「歌うことでなく、楽しむことが目的だからそんな対応ができる」と話します。

回想、コミュニケーション、その可能性の広がり

歌が引き出す回想は認知症予防などにも効果のあることで、ただ歌っているよりもコミュニケーションが伴うほうが効果があるという音楽療法の研究もあります。話すことによって精神的、情緒的な安定が図れるとも言われています。
また、こうしたコミュニケーションは、これまでの暮らしの様子や経験を共有することになり、そこにいる人たちの相互理解を深め、結びつきを強くしてくれます。
歌をそうした媒介ととらえると、さらに可能性が広がります。福島県安達町の仮設住宅での支援活動では、端午の節句の歌がきっかけとなり、浪江町では粽(ちまき)を作る習慣がないことがわかり、「今度作ってみようか」と話しがされていきました。これまでも手遊びやお手玉遊びを被災者の方から教わったように、被災地の文化、習慣を楽しみ、伝えていくこともできるでしょう。歌をきっかけに地域の行事やものづくりを始めたり、子どもたちや避難先の地域の人たちとの交流を広げていく、そんな活動につなげていくこともできるかもしれません。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  支援の方向(6-1)

リズムの効果

子どもたちのストレス緩和のために、大縄とびやグループ・バンブーダンスなどのチャレンジ・ザ・ゲームが有効であることを、何度かお伝えしてきました。ストレスの軽減にはリズムに乗って声を出し、人との触れ合いのある活動が有効で、それによって活性化されるセロトニン神経が感情的な情報をコントロールし、精神を安定させる働きがあると言われています。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  支援の方向(7-1)

こうしたリズムの効果を活かした遊び・活動は、歌や手足の動き(拍子をとるなど)を使ってもできるでしょう。特集で紹介したわらべ歌やボディパーカッションを活用すれば、道具や楽器がなくてもでき、災害直後から用いることができます。さらに、不安定な気持ちを、速いリズムや発声で発散させ、段々にゆっくりとしたリズムに落ち着かせていく。反対に、徐々にテンポをあげていったり、声を大きくしていったり、声の高さを上げていきながら、気持ちを高揚させていく。そんな遊び・活動ができるのではないかと、音楽の活用に可能性を感じます。

歌に励まされ、気持ちを整理し、心に響く旋律に癒やされ、軽快なリズムに体を動かされる。私たちが経験してきた音楽の良さ・力を活かす方法は、他にもたくさんありそうです。普段のレク活動のなかに音楽を取り入れ、いろいろな遊び・活動を作り、共有し、リードできる人材を増やしていく。それは、今後の災害への備えにもなっていきます。

(企画・広報チーム 小田原一記)
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