災害時のレクリエーション支援
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  子どもたちの支援
レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ 

子どもたちの支援

公開日
2020年8月19日
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2013年6月27日
東日本大震災と九州北部豪雨災害の支援活動から①


辛い体験を乗り越えるために、成功体験を大切にする 久保誠治 熊本YMCA本部事務局長 レクリエーション・コーディネーター

2011年6月に宮城県・福島県の被災地を訪ね、遊びを通した継続的支援活動を行った。また、2012年7月に九州北部豪雨災害が発生し、その際も精神科医と共に「あそぼうキャンプ」を実施した。これらの実践から、遊びを通した心のケア活動のポイントを示したい。
阪神・淡路大震災での兵庫県教育委員会の調査「こころのケアが必要な児童生徒数の推移」によると、災害発生後の数年間、心のケアが必要な児童生徒数が増加する傾向にあった。東日本大震災の支援活動は3年目に入っているとはいえ、そうした傾向があることも考慮したい。
明日に生きる子どもたちの「遊びを通した心のケア」の根底にあるものは、子ども自身が持っている「生命力」「生きる力」「回復力」(レジリエンス)であり、その力を引き出す支援が心のケアだと子どもたちから教えられた。

キャンプを通して楽しい成功体験や楽しい思い出を提供する

「あそぼうキャンプ」には、九州北部豪雨災害で被災した子どもたちと、東日本大震災で熊本県に避難している子どもたちが参加した。ご指導いただいた精神科医の仁木啓介先生と小林正幸教授(東京学芸大学)はEMDR(専門的なトラウマ治療の手段)学会の理事で、東日本大震災の子どもを対象に「みどりの東北元気キャンプ」と題し、福島県裏磐梯でのキャンプを通した心のケアを行ってきた。そのなかでは、津波被害に遭った子どもたちに川遊びやカヌーをさせ、家を失った子どもたちが協力し合ってツリーハウスを作成するなど、成功体験を持たせるような体験活動を展開していた。
心の傷は本来の子どもに変化を与える。重篤な場合には成長発達を遅らせたり歪めたりする可能性があるため、被害児の心のケアが重要になる。被害で固まった子どもたち、孤独で内にこもっている子どもたち、平静を装っている子どもたちに、皆とつながる経験を持ってもらい、お互いを気遣い助け合って「一人ではできないかもしれないけど、皆と一緒ならば平気でやれるんだ、乗り越えられる」という体験と、感情を含め様々な自己表現ができるという体験を手渡す。キャンプを通してそうした成功体験や楽しい思い出を持ってくれれば、それ自体が未来を照らす大きなリソースになる。
「あそぼうキャンプ」も、自然の中での体験活動や集団生活を通し、つらい経験を、「楽しい・嬉しい・力強く乗り越えることができた」という経験で心のアルバムに上書きをしたい、そのような願いを持って実施した。キャンプでは、水源で自然の恵みの素晴らしさに触れることや、ホースセラピー、協力して創りあげるクラフトなどを行った。また、偶然にも大型台風が接近するという出来事もあり、子どもたちが一致団結してそれぞれの活動に取り組み、台風の〝恐怖〟を乗り越えることができた。

遊びを通した「心のケア」の4つのポイント

成功体験と楽しい思い出を提供することの大切さと同時に、遊びを通した「心のケア」に取り組む際に4つの配慮すべきポイントがある。これらのポイントは、アメリカで様々なトラウマを抱えた子どもたちを癒し、育ててゆく活動「Project Joy」において示されており、「あそぼうキャンプ」やこれまでの支援活動にも当てはまっている。この夏の子どもたちの支援活動やキャンプにおいて、プログラムやアクティビティを選択する視点にしていただければ幸いである。

①楽しむこと
思いっきり遊ぶことで夢中になり、大脳を刺激し、恐怖を減らし、再び喜びを感じる。
②社会との関わりを持つこと(他者との協調)
子ども自身が他者と周囲の環境に協調しながら交流を持てるように配慮する。そうした関わりから「自分が大切にされている」と感じ、自分への信頼感(自己効力感)を高める。
③精神的安定
子どもの感じる安心感、必要とされている感覚を持てるように配慮する。それらの感覚が、他の世界と関わりを持てる能力につながる。
④積極的な関わり
子どもがアクティビティに関わる際、情熱を持って没頭できるか。情熱的で面白く、好奇心や想像力を引き出すに十分な内容であれば、過去の恐怖や悲しみを和らげ、脳の中に「楽しさ」が根付くスペースが生まれてくる。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  子どもたちの支援(3-1)
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