レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  支援の方向
レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ 

支援の方向

公開日
2020年9月15日
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2012.5.2
Vision of the team recrew—震災レク支援のこれから―
レクリエーション支援の幅、そして可能性


早い段階からレク支援をするための労力支援

東北福祉大学の学生サークル「まごのてくらぶ」は、震災の翌日から大学近くの避難所で食事支援や生活支援、そして子どもたちのレクリエーション支援を行い、その後も、石巻市等で泥出しなどの労力支援、ボランティアのコーディネート、流された写真の洗浄・整理といった活動を行っていきました。
サークルの顧問で宮城県レクリエーション協会の副理事長でもある金義信先生は、阪神・淡路大震災の時に、社会福祉協議会の職員として支援活動に関わりました。その際、初動体制の72時間の間に、適度な運動やスキンシップによって被災者を落ち着かせ、コミュニケーションを取っていく様子を避難所で見ました。被災直後の命に関わる時期なので、「楽しむ」ためではないのですが、レクリエーションの手法が用いられていたのです。こうした初期の対応や避難所生活でのストレス緩和なども含め、「早い段階からのレク支援が効果的」と言います。
一方で、震災直後からしばらくの間は衣食住といった生活基盤に関わる労力支援が優先され、現場で「レク支援」を口にすることは難しく、今回の震災においても、災害ボランティア・センターや避難所の担当者は、生活基盤に関わる仕事で忙殺されていました。そうした中で、「労力支援をすることが、早期のレク支援につながる」と言います。労力支援を通して現地の行政、社会福祉協議会等の関係者とつながり、信頼関係やレク支援への理解、支援を必要としている人・避難所の情報を得られやすくなるのです。「労力支援をやった人たち」という実績も、地域からの認知を受けやすくします。
労力支援はレク支援とは切り離されて考えられることが多いのですが、レク支援を早期に実施する導入部分ととらえ、災害時の対応を想定していく必要がありそうです。また、災害時に対応する地域ネットワークをつくり、それぞれの団体の役割を定めていくことが、初期段階でのレク支援をしやすくすると金先生は提案します。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  支援の方向(1-1)

暮らしの中に「楽しさ」を創りだす支援

「まごのてくらぶ」は、津波で流された写真の洗浄・整理を南三陸町で行いました。これは現地から求められた労力支援でもあったのですが、被災者の思い出を取り戻し、厳しい状況の中で安らぎや心の安寧を支援することでもあります。レク支援は、楽しく身体を動かしたり、仲間とのコミュニケーションを楽しむ直接的なプログラム提供が中心ですが、被災者自身が避難所や仮設住宅での生活の中にちょっとした楽しさや心地よさを創りだす、そうした支援にも取り組む必要があります。
金先生は、そうした視点から仮設住宅の住環境を支援することもレク支援と考えています。仮設住宅の玄関の前にテーブルを設置して、気軽に住民が集まって食事ができるようにしたり、当初多くの人が困った“収納”のために棚を作るといった支援です。確かに、福島県レク協会が仮設住宅で行った段ボール製の整理ボックスづくりは、それだけでも住民交流のイベントになっていました。大槌町のサポートセンターでは、高齢者を買い物に連れ出す支援をしていました。これは買い物よりも外出を楽しむことが目的で、それによって身だしなみにも気を配り、みんなが元気になっているといいます。
暮らしの中に「楽しさ」を創りだす。その視点からは、様々な支援の形がありそうです。盆踊りなどの地域行事や季節の行事を支援し、生活の中でそれに向けての準備も楽しんでもらう。そんな支援を計画する被災地のレク協会もあります。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  支援の方向(2-1)

夢、可能性を広げる支援

今、「まごのてくらぶ」では、女川町で「ものづくり」と農園活動を支援しています。どちらも閉じこもりを防止して、健康づくり、生きがいづくり、仲間づくりという、とても基本的な目的の活動ですが、「夢や可能性が広がる活動」だと言います。
ものづくりは、廃棄処分となった剣道の竹刀を再利用し、孫の手を作っています。材料と道具を提供し、作り方を学生が教えたところ、仮設住宅の集会所で製作が続くようになりました。めずらしく男性の姿が多く、「漁師は手が効く(器用)」と、すぐ上手になりました。「次は竹炭を作ろう」というアイデアも出ています。こうした支援にあわせて、宮城県内外の中学校から大学の(剣道部)に呼びかけ、竹刀を集める仕組みを作りました。これはスポーツ関係者が間接的に復興支援に関わる仕組みにもなっています。作った孫の手を販売していくことも、作り手のやり甲斐を大きくするレク支援となるかもしれません。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  支援の方向(3-1)

農園の活動も、収穫し、それを分けたり、みんなで食べたりといった夢を描きやすく、「先に希望があるのでみんなの意欲が出てくる」と言います。活動の中では子どもたちやボランティアとの交流が生まれ、様々な課題も出てきて、その都度、いろいろな人の知恵や経験が活かされます。農園にベンチが必要となれば、大工仕事の得意な人が瓦礫の廃材を利用して作りました。鹿よけのネットも瓦礫となった漁網を再利用しました。こうした支援活動をヒントに、今度は瓦礫(木屑)を利用したものづくりをして、販売にもつなげ、高齢者の生きがいづくりを瓦礫の処理と復興支援に結びつける支援活動も考え始めました。

現在、被災者支援には大きく分けて2つの支援、「交流や仲間づくりも含めた心身の健康づくり」と「やりがい・生きがいづくり」が求められていると金先生は言います。「心身の健康づくり」については、レク支援の有効性をまとめ、行政等の災害対策担当者に周知することや、被災地以外でも災害時を想定したレク支援のノウハウを普及することが、今後の災害対策にもなると言います。
「やりがい・生きがいづくり」については、「暮らしの中に楽しを創りだす」、「夢や可能性を広げる」という視点から、住環境の支援やものづくり、その販売など、多様な支援の形がありそうです。その中でも、誰もが一番やりがいを感じる復興支援とレク支援を結びつけることができた時(例えば、瓦礫を活用したものづくりや、震災の風化を防ぐための交流活動等・・・これも被災地のレク協会で考えられています)、レク支援とレク協会の可能性も広がっていくと思うのです。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  支援の方向(3-2)


(企画・広報チーム 小田原一記)
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